”器”の物語

ある日本の食品メーカーは、年間3億本の販売実績を誇る「アイスクリームバー」の売上目標を”8億本”に設定し、グローバル市場での販売を強化しています。

そこには、原材料である食材へのこだわりや製品が提供する顧客価値をより多くの人にひろめたいというグループ理念が基盤にあると思われます。

いったい何故、同社は、2倍以上の高い目標を掲げたのでしょうか?

また、この目的・目標・期限の設定によって、グループの”なに”が変わるでしょうか?

ちょっとだけイメージしてみてください、、、

未来を予見し、来る未来に
”ありたい姿”
を思い浮かべましょう。

ピーター・F・ドラッカーは、ビジネスは“人”によって創造され成功させられるものであり、多くの人が正しいと考えている利益最大化は、経済活動の条件の一つにしかすぎず、信念・行動の目的にはならないと述べています。

“Business Created and Managed by People, Not by Forces”

“The Fallacy of Profit Maximization—Profit: An Objective Condition of Economic Activity, Not Its Rationale”


(Drucker, Peter F.. Management: Tasks, Responsibilities, Practices. HarperCollins.)

“ビジョンを創る”ということは、ただ単に、”組織・集団”のありたい姿を考え言語化・浸透させるのではなく、組織・集団の共通の目的であり、社会的使命を満たすものとする必要があります。

またそれは、実現可能なもので、顧客に価値を提供し、十分な対価を得るものでなければなりません。

ビジョンの実現には、ビジネスプロセスや組織、資源などの様々な要素が必要となります。

ドラッカーは、私たちが自らの組織・集団に対し、いつ何時も問いかけることとなるであろう、最も重要な5つの質問について書き著しています。

① 私たちの使命は何か?

② 私たちの顧客は誰か?

③ 顧客は何に価値を見出すか?

④ 私たちの成果は何か?

⑤ 私たちの計画は何か?

“What is our Mission? with Jim Collins.”

“Who is our Customer? with Phil Kotler.”


“What does the Customer Value? with Jim Kouzes.”


“What are our Results? with Judith Rodin.”


“What is our Plan? with V. Kasturi Rangan.”


(Drucker, Peter F..The Five Most Important Questions You Will Ever Ask About Your Organization. Jossey-Bass.)

器を創り、

目指す目的・目標・期限にあわせて“器”を創ることは、とても重要なことだと考えます。

目的・目標・期限と“器”が一致していないと期待する成果が得られなくなるからです。

“器”には、十分な資源、規模、プロセス、メンバーの構成(能力・多様性等)、信頼関係、リーダーシップ、行動規範、組織設計、組織文化、マインド・モチベーション・エンゲージメント、業績評価・報酬システムなどの要素すべてが含まれます。

しかし、“器”のすべてが十分にそろってビジネスをスタートできるわけではありません。また、“器”は必要な時にすぐそろうものでもありません。

“器”はタイミングを見越してそろえていくことが必要となるものです。

“器”は、目的・目標・期限の見直しにあわせて変更する必要があるものです。

ドラッカーは、最小の努力で最も偉大なアウトプットを得るための全ての生産要素を調和させる活動を生産性だと述べています。

Productivity means that balance between all factors of production that will give the greatest output for the smallest effort.

(Drucker, Peter F.. Management: Tasks, Responsibilities, Practices. HarperCollins.)

一方で、ドラッカーは、多くの人が“生産性”を口にするけれども“生産性”についてほとんどわかっていない、測定できていないとも述べています。

“器“は未だ解明されていない生産性であり、全投入要素の意思決定であり、全ての投入要素を有効に機能させるための組織基盤・構成・タスク・プロセスともいえます。

どのような“器”を創るかは、組織・集団がどのようなビジョンを実現したいか?どのような目的・目標・期限を達成したいか?に同期して決まるものだと考えます。

器から溢れ、

“器”には“中身”が入ります。

“中身”は人財・機械・設備・ITツールなどに代表される資源そのものに、それぞれの資源に付随する特性や能力なども含まれます。

“中身”はビジョンに共感し“器”に入ります

しかし、“器”が”中身”で満たされていても、“器”が適切でないと“中身“は活躍できません。

小さな“器”に大きな“中身“を入れようとしても入りません。

丸い“器”に四角い“中身”を入れようとしても入りません。

“中身”には個性があり“器”に無理にあわせようとすると壊れます。

“中身”のひとつを磨いても、企業の目的・目標は達成されません。

“中身”は、”器”に調和し、最適化されなければなりません。

時間が経つと“中身”は経験し、学習し、成長します。

“器”に成長の機会がないと“中身”は頑張れなくなります。

“中身”は自らが成長・活躍できる“器”を求めます。

”中身”は、自らの”器”が変わってほしいとも考えます。

器を変容させ、

“中身“ひとつひとつの力は微力です。

したがって“中身”ひとつで”器”を変えることはできません。

しかし、“中身”が集まると大きな力を生むことができます。

“中身”は、別の“器”とつながっています。

“中身“は、別の”器“のつながりから様々な経験・学習をしています。

でも、“中身“は、ユニークな経験・学習値が”器“に活かせるのかよくわかりません。

“中身“同士も互いのユニークな経験・学習値をよく知りません。

本当は、“中身”のユニークな経験・学習値が“器”に貢献すると、組織・集団に新しい知見が生まれることを知っています。

さらに“中身”のつながりが“器”に加わると進むスピードが加速されます。

個性を持った“中身”が共通の目的に向かい、集団に貢献すると、”中身”ひとつひとつの能力の和を超えた成果が生まれます

そして、大きな成果は、ビジョン実現の歩みを大きく前進させます。

そして器となる。

私たちは、ビジョン実現のひとつ目の目的地に向かっています。

ビジョンの実現は、幾多の困難を乗り越える長い道のりです。

長い道のりを進むには、途中で立ち止まり、振返ることが大切だと実感しています。

振返りには、新しい理解が生まれ、新しい理解には、新しい行動が生まれることを学んでいます。

私たちは“向かう”ことは“進む”ことであると考えるようになっています。

”進む”上において最も重要な尺度は、進んでいるか?進んでいないか?だと思っています。

達成したか?達成できなかったか?の評価ではありません。

結果だけみると達成できる到達点しか設定されなくなり、プロセスが見えなくなります。

私たちは、進むためには、現在地と道標と尺度が大切だと考えています。

現在地がわからないととどこにいるか?がわからなくなり、道標がないとどこへ向かえばよいか?がわからなくなり、尺度が見えないと、歩みが早いのか?遅いのか?がわからなくなります。


まもなく、ビジョンに向かう道のりの一つ目の到達点です。

私たちは、すでに次の目的地を見据えています。

次の目的・目標に向かうための新しい”器”も創っています。

すでに、組織・集団の目的・目標は、参加者全員で話し合い、決めて、達成するものとなっています。

同じ船に乗るクルー全員で目指し、協力し、到着しました。

私たちは、船造りにかかわった人、出迎えた人、応援してくれた全ての人と達成の喜びを分かちあっています。

そして、、、新たな”器”で、次の目的地へ向かいます。

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対話からはじめましょう。

ダイアログを通じて「新しい洞察や他者への貢献」、「相互理解と共感」「未知への好奇心と挑戦」が生まれる土壌が育まれます。